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会長挨拶


同窓会会長 安藤 孝夫

 新年明けましておめでとうございます。

 年頭あいさつの前に、この度の令和6年能登半島地震におきまして、甚大な被害が発生し、多くの方々がお亡くなりになられました。謹んでお悔やみを申し上げますとともに、避難生活を余儀なくされている皆様をはじめ、すべての被災された皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 改めまして、皆様には、令和6年の新春を、晴れやかにお迎えのことと、心からお慶び申し上げます。令和6年度の大阪大学工学部・工学研究科化学系同窓会[会報56号] の発行にあたり、ご挨拶申し上げます。旧年中は、本会の活動に対し格別のご理解とご協力を賜り、誠に有難うございました。 本年も会員の皆様のご支援ご協力を頂きながら、会員相互の繋がりをさらに強化し、活発な同窓会にできればと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 昨年を振り返りますと、3年以上もの間、行動を制限していた新型コロナウイルスの感染法上の位置づけが5類に移行したことにより、日常における基本的な感染対策については、私たち個人の自主的な取り組みをベースとした対応に変わり、コロナ前の生活に戻りつつあります。また、訪日外国人の多さを実感されている方も多いと思いますが、インバウンド需要の回復をきっかけとし、日本経済が上向くことを期待しています。

 米中対立やウクライナ戦争、イスラエルとハマスの紛争、台湾有事危機など日本を取り巻く国際環境は厳しさを増しており、そのうえ、BRICSの拡大やグローバルサウスの台頭など国際舞台には新プレーヤーが続々と参入しています。G7が世界を舵取りした時代は終わりつつあります。

 また、ウクライナ侵攻や急激な円安は我々の生活に大きな影響を与えています。この侵攻を機に原燃料価格や食料供給が不安定化することで、世界的なインフレが進んでおり、日本にもその影響が色濃く出てきています。急激な円安、原料高、資源高の三重苦にさいなまれ、インフレ対応策に動く日本企業が増えています。そして、今年は、米中のデカップリング(分断)問題がいっそう深刻化しそうです。中国は自国に利益をもたらさない企業を締め出し始めています。一方で、グローバルなサプライチェーンを構築する企業は中国以外の地域で「非効率な二重投資」を迫られます。化学業界におきましては、原油価格が不安定となり、事業環境は予断を許さない状況にあります。そのような中、企業は柔軟で多様な働き方の実現や、労働生産性の向上を行い、デフレマインドから脱却して積極経営を進め、設備投資や研究開発投資を活発化して、新たな成長機会の創出に取り組んでいかねばならないと思います。

 日本は「安くて良いものを作ることに」こだわり、シェア争いを続けてきましたが、高くても社会課題を解決し社会・顧客に貢献できる高付加価値の製品開発を行うべきです。昭和の高度成長期のようなワンパターンの仕事に従事する人材では、これからのVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)時代のグローバル競争に勝ち残ることはできません。各自の心理的安全性を確保しながら、多様な人材(ジェンダー・国籍・年齢・キャリア等)による、多様な働き方が重要です。女性活躍については、人手不足解消のためだけではなく、それ以上に “ 多様性 ” を活かすために重要と思いますが、日本のジェンダーギャップ指数は、全世界146か国中、125位と女性が活躍できていません。

 さて、昨年は、エルニーニョ現象の影響もあって全世界的に高温となり、日本では、少雨による農作物被害や水不足が発生し、カナダや欧州では、乾燥の影響で大規模な山火事が発生して広大な森林が焼失してしまうという深刻な問題も生じているところです。さらに、昨年のCOP28では、世界の平均気温上昇を産業革命前より1.5℃に抑えるというパリ協定の目標達成に向けた取り組みの強化が求められるなど、人類の持続可能性を脅かす地球規模の危機である気候変動問題は、人類が直面する大きな課題であります。その解決のためには、自然科学と社会科学が生み出す「総合知」をベースに、複雑に分野・技術が絡み合った科学の総動員が求められます。実際に科学技術を社会に提供して社会を変えていくのは産業界であり、アカデミアによる知の源泉の深耕はもちろん必要ですが、一歩踏み出すべきは中長期的な視点で産業界とアカデミアが同じベクトルで向き合う産学連携が重要です。日本の化学は世界をリードし、日本の化学企業は高い付加価値を創出する産業であり、地球環境問題においても、化学・化学技術が先導役となり解決に繋げていくことは、社会からの期待が大きいと思います。サイエンスにおける学術の役割は基本的に真理の探究ですが、化学にはイノベーションに直結する要素があり、アカデミアはもっと社会実装を意識すべきと考えます。

 また、地球環境は大きなテーマですが、すべての対策の根本は、私たち一人ひとりの考え方と行動から始まります。これまで幾度となく使われてきた言葉「地球規模で考え、地域で行動する(Think globally, Act locally.)」を今一度噛みしめ、行動につなげなければならないと思います。

 現場において、一人ひとりの創意工夫によってイノベーションを生み出す力こそが日本の強みであります。 これから更なる激動の時代を迎えますが、私たちの出身である化学系教室には、主体性や説明能力の向上に資する授業への改革を行うとともに、世界をリードする独創的な研究により我が国の科学技術の発展に寄与しながら、独創性に富み、グローバルな視点とリーダーシップを持つ多様で質の高い人材を育成し社会に送り出し、今後とも一層我が国の産業の発展に寄与して頂くことを期待しています。

 そして産業界も、企業が求める人材像を大学と共有し、学生の皆様に伝え、働くことの意義や企業活動の実態を肌で感じてもらうために、早い年次での長期インターンシップに積極的に取り組み、大学と実社会の間に依然として大きく存在するギャップを少しでも解消し、学生の皆様が自身の将来に関心、自信を抱くことが出来るようにしていければと思います。

 末筆ではございますが、会員の皆様の益々のご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げるとともに、皆様のご健勝と一層のご活躍を祈念しまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

以上